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合成とプラグの応用 クロマキー2

戦前の映画監督に伊丹 万作 氏がおられる。(稲垣 浩監督の「無法末の一生」の脚本でも有名)氏が昭和12年に書かれた「カメラに関する覚え書」を辺境文庫にアップした。
http://audience.studio-web.net/bunko/navi.cgi?word=%88%C9%92O&cond=0&view=10

このPDFは7ページからなるが特に4ページから6ページにかけて氏が求めるカメラマンの役割を克明に述べておられる。この考え方はそのまま現在にもあてはまる。とくに合成等の時にもっとも注意を払わなければならないポイントが書かれていると思っている。

テレビ等で合成された絵をみて感じることを幾つか上げてみよう。
当然ながら人物の背景はブルー等のクロマキーバックを仕込むが合成される前の状態では青い壁の前に人物がいるだけで構図は発生しない。絵画的には習作とか言われるカテゴリーに属している。そこに合成で無理くり背景を入れると2つの問題が発生する。一つは背景と前景が構図的に連続して絵として自然に見えるかということで「カメラに関する覚え書」の注意点と一致する。

二つ目は撮影スタッフが光源色をどのように考えているのかという点でスタジオの照明器具は大方3200度を中心とした色温度、背景は概ねオープンが多いので6500度を中心とした色温度となる。極端にいうと背景は青系の色調で前景は多少赤みがかった感じになることがままある。

テレビのトレンドはハイビジョンによって提案されている黄金分割に近い画角と高解像度によるリアリティーだが色についても少しずつxvYCC(色革命)規格が浸透し始めている。
http://audience.studio-web.net/diarypro/diary.cgi?no=55

高解像度のリアリティーは当然ながら構図的な連続性と色的な統一性を前提として成り立つが、このように合成をマジに考察すると非常にやっかいだと思わずにはいられない。気をつけないとリアリティーが吹っ飛ぶからだ(笑)しかもこの部分では常に予算をふんだんに使っているハリウッドの合成と常に比較される宿命を持っている。

更に疲れるのはクロマキー抜けを確保するためにスタジオ内ではかなり照明器具を使うため夏場等ではスタジオ内の温度が上がる傾向にある。そこでカメラマンによってはレンズも考えないでポジションを常にクーラーの側に設置するクールなトンデモ系カメラマン(爆)が、まま現れる。そこまでイイカゲンにフレームを決められるとスタッフは心情的にダレはじめクロマキー抜けさえ確保すれば仕事を早めに終わり早く家に帰りたいなどと思うようになる(爆)。

撮影というのは共同作業が前提とされる事が多いがテレビでみる画面で映画以外でこれはよくできていると思われる合成映像が多くないのは予算や技術的な壁とスタッフの資質が求められているといってもよいかもしれない。
プラグ的な問題とは別次元と拙は思っている。

合成とプラグの応用(クロマキー・スクリプト)

ニュース等でアナウンサーが出演する背景にブルー系の背景が多い事に疑問をもたれた方はいるだろうか。これは視覚的に合理性を伴った色の配合でベクトル・スコープ上でみると顔の色とブルー背景は180度前後の位相間隔がある。これは印象派の理論である補色の関係に等しい。どちらかの色を強く見せるにはこの補色を使うとメインの形状が強く見えるという理論にもとづく。たとえばゴッホの絵等が典型だが黄茶色系の椅子の影には黒のように見えるがよく見るとブルー系の色が忍ばせてある。(テレビでは背景のブルーの明度を下げるのが通常だ。)

初めてクロマキーを見たときに補色関係を巧く利用しているセンスに舌をまいたものだが初期のハード・クロマキーでは次のような弱点がでてきた。
・走査線の影響で抜けきれない部分があった。
・そのためその部分では抜けきらないブルーが見える。
それが物体の動きとともにブルーもチラチラ追従するのである(笑

そのためにソフト・クロマキーというコンセプトがでてきた。これの特徴は
・キーの発生原理は従来通り
・ただし被写体の抜けのブルーを白黒化(色抜き)をしてしまう。
・そしてキーとブルーだけ色抜きをした信号を合成する。
こうすると原理的にチラチラ追従しているはずだが抜けきらない部分は白黒になっているので見た目には奇麗に抜けているように見えるわけだ。なるほど色相的には逆相のブルーを使用する事により色抜きをかけても肌色に対しての影響を最小限に抑えることができる。そのためソフト・クロマキーの原理は一世を風靡し最近では走査線の影響を無視できるプログレッシブのカメラが普及した恩恵を受け合成もかなり有利となっている。

拙も上記のコンセプトでプラグを書く事はやぶさかではないが躊躇している原因が2つある。一つはここのコラムでも再三かいたが色の基準を確定できない恐ろしさ。これは半端ではない(笑)商品カット等の色の再現性をどこに置くか悩むに決まっているからだ。もっともこれはクロマキーに躊躇する一次的な原因ではなく色系のフィルター全般に言える問題だ。

2つめが映画「Matrix」に起因する(爆
最近のハリウッド映画の合成バックは緑を使用する事が多い。このメーキングを見たときに正直「はぁ〜〜〜?」との思いが交錯した。輝度的には緑が一番強い電磁波なのでキーに利用すれば抜けのいいキーはできるかもしれない。だがソフト・クロマキー的発想をすれば顔の色にもろ影響がでるはずだ。(しかも補色は赤(笑))つまりターゲットの色が顔から何から全部影響を受けてしまう。正直、「何でよ」の思いが続いている。(笑)

これでは書けない(爆)そのためというのではないがよい機会があったのでPixelMaskでキーイングの実験とクロマキーの実験を平行して行ってみた。
http://audience.studio-web.net/FxScript/Fx.cgi?mode=dir&dir=76

両方とも実験を進めているが何回目かの壁にぶつかり頭を冷やしているところだ。(キーイングはピンスポットではうまくいくのだが商用ではなんだか(笑))
色の道は難しいと書いたが抜けの道も難しい。なにやら下ねたノリになってきたが偽らないところだ。(笑

合成とプラグの応用 3(レベル・キー)

アップロードファイル 103-1.jpgアップロードファイル 103-2.jpg

(6月15日の記事)
キー操作を大別すると外部から持ち込むキー素材と内部で生成するキーとに分けられることに異存はないと思う。レベル・キーと聞くと抜けきらないイメージを想像する人が大部分かと思うがこれは対象画像から生成された白黒のキー信号が完全に2値化せずに諧調の伴った信号になるせいだが、問題は対象画像にそもそも諧調が存在する事で通常の取り組みではうまくいかないことは皆様方の経験でもおわかりになるであろう。

ここでのMask+、Mask+2の設計思想はリニアー時代の経験から基づいているのでご披露したい。写真を使った合成ものがローカルでは今でも多いと思う。これはその時代にどのように処理したかのお話だ。商品写真をきれいに抜くには色々な方法を試行錯誤し次の方法にたどり着いた。商品にそってハサミできれいに切るのだ(爆)。そして大きなガラスを垂直にたて、足場を固めて写真を貼付ける。写真用のライトと背景用(背景は白)のライトを用意し商品は写真用のライトで撮影しマスクは背景用のライトで撮影する。原理的にはこれで商品と白黒が逆になったマスクが出来上がる。この工程にリアルタイム・エフェクターが入りマスクの動きはVTRに収録される。最終的には背景の画像が入ったVTRとマスクのVTR、そして商品出力はリアルタイム・エフェクターを使用し録画用のVTRに収録される。このテープが背景画像用になり同じような作業が4〜5回繰り返されて写真が沢山合成されて美味しく動いている絵になるわけだ。

このように計算された映像を収録するにはVTR3台とプリセットが効いたリアルタイム・エフェクターのコンビネーション動作で下地を積み上げて行く作業が必要であり今の作業環境と比較すると隔世の感がある(笑

この作業で学んだ事はなんだかんだ言っても2値化されたマスクは絶対に抜けがいい事と商品の色に拘らなくても楽にキーイングできる環境だった。拙がレベル・キーをアルファーチャンネルやクロマキーより重視するのはこのトラウマが原因だ。また前々回のコラムで書いた色にコミットしなくても良い精神的な安心感もある(笑)そのため上記のプラグインもマスクと本体の2つの素材が基本となっており抜けの良し悪しは素材の解像度に着目する以外考えられないようになっている。

それでは動画はどうするのかというとCG以外はクロマキーしか考えられないだろう。次回はクロマキーについての雑感を書いてみる。余談だが写真の切り抜きはそのうち江戸屋猫八みたいなハサミ使いが現れて実に芸術的な切り方をしていたのを思い出しているが笑いを禁じ得ない。

合成とプラグの応用 2(他規格との擦り合わせ)

アップロードファイル 101-1.jpg

(6月10日の記事)
合成とプラグの応用についてはとても深そうなテーマとなりそうなので新たに分類をもうけコラムを追加していきたいとおもう。

FCPに限らずパソコンによる動画編集の大半は方式の違うフォーマットも最終的にはピクセルベースで処理される。FCPはこの特徴を生かし各種のフォーマット変換をしながら編集データーとして扱い設定されたフォーマットに出力する。いわばファイルコンバーターの上に動画編集ソフトが乗っているイメージといってよい。

前回のコラムで報告した擦り合わせの中で他規格の場合はちょっと考え方が違うかもしれないという思いが浮かんで来た。例えばHDVもピクセルベースでありFCPの編集対象のフォーマットである事は言うまでもない。ところが色再現性については液晶ディスプレーで見る限り抜群にいい。それには理由があってHDVの色再現特性の(ITU-R BT.709)規格はパソコンのsRGB規格とまるで双子と見間違うような特性を持っている。

これは変な言い方かもしれないが機器を供給するメーカーとしては撮影した素材はパソコンベースで編集し再生ベースもYUVであるNTSC(ITU-R BT.601)規格は編集ソフトによっては見る事はできるが(レーター・サイズだけだが)、本来はHDVが視聴できる今様の液晶大型テレビがベストですよというのがメーカーの立場だということだ。つまりYUVと系が全然違うのである。HDVはパソコン編集時に再現色領域が最適にモニターでき本来は専用(最適)の再生環境(大型液晶TV等)で視聴を行う家庭用ハイビジョン・システムというわけだ。

拙は軸をYUVに置いているために色合わせなどの擦り合わせで窮屈な思いをしたがよく考えたら別物だった(爆)。たまたまFCPはYUVも編集できるが別次元のフォーマットも特徴を生かして編集できる。ただ翻弄されたのはピクセルベースで画像を動画ベースで抽出する各種コンバーターをハンドリングしたことで非常にHDVをYUVの身近に感じたのが仇になり規格本来の持っている再現領域を変更することまではできないということに考えが及ぶのに時間を要した。他規格全般にわたって色に対する考え方を修正しようと思う。それではYUV系のDVや非圧縮の場合はどうかというとやはりsRGB領域では解決がつかないのでマスモニで対応するのが一般的な考え方だと思う。(但しこれは色を調整する環境において望ましいということだ)

他規格との擦り合わせを同一次元に考えた、休養が必要かもしれない(笑)、色のチューニングを今まで必要とするプラグはあまりなかったのも原因だが...

合成とプラグの応用(ガンマーと色再現性)

(6月8日の記事)
合成とプラグの応用というコンテンツの公開準備をまったりと開始した。しかし以前にもコラムに書いたと思うが色系をコントロールするプラグは少なく実態は拙が気は進まなかったのもあり一方的な傾向色として色が偏る装備でお茶を濁している。ところが合成を扱うとなるとクロマキー等も外せなくなり、そうなると色的な作業環境も定型化させなければならないという事で液晶の色設定をこの3週間弱にわたって擦り合わせしている。(というか感覚的に慣らしていると言う方が正解かもしれない)色以外のプラグでは有りもの素材の効果を考えるだけなのでこのような考え方をせずにすむ(撮影された素材なので)のだが今回はそうもいかなかった。(拙の最終確認方法はマスモニだがそれを強いることはできないので液晶で出来る方法を模索した)

Macは印刷用に適合するようにガンマー1.8を標準に設定している
http://www.apple.com/jp/pro/filmvideo/nle/06/index.html

これはこれで構わないのだが、このガンマーのパソコン画面でかっちり色合わせをしてもテレビで再生する時は黒が効いた重い画面になるはずだ。拙が気が重かったのは更に自分の液晶も色的には信じられないところから発生している。一般の家庭用のTVはガンマー2.2と定められているがこれはテレビの創世記に製造技術の問題でしかたがなく2.2と定められたと思っていた時期があった(笑

ところがこれも人間の明るさに対する視覚特性からきている。人間の感じる明るさは実際に目に入る明るさが0.33〜0.45で1と感じる事が判明しカメラのガンマーが0.45になったいきさつがあるようだ。これで0.45*2.2=1の近似値という事になった。わかりやすく説明するとTVガンマー(2.2)*カメラ・ガンマー(0.45)→目に入る光の強さ(0.45)=感じる明るさ(1)ということでカメラのガンマーを目に入る光の強さと同じにしTVガンマーを2.2に設定するれば明るさに対してTVは視覚的な直線性が近似値で得られるという原理だ。(近似値というのがひっかかるが人間の感覚も人によって一様ではないので(0.33〜0.45)良しとしたのかもしれない)

そこで定型化のプロセスとしてディスプレイキャリブレータでガンマーを2.2、ホワイト・ポイントをD65(6500度)に設定(一般的なマスモニに近い)し小型のマスモニと擦り合わせをしている(つたない写真だが一応参照)TVとのコントラストの違いは消えたが(コントラストだけでもありがたい)色の違いはやはり残ってしまう。これは根本的に液晶がsRGB系統のパソコン色再現領域とマスモニがYUV再現領域との食い違いで起きるものと拙は思っている。基本的にはYUVはsRGB帯域を包合しているので液晶の見え方よりマスモニを信じなさいという結論となる。これは理屈は通っているのだが実際使う段で液晶はこうですので色合わせは自己責任でお願いするか測定器の一種であるマスモニをご覧ください等と言えるわけがない。これが予想されたので色系のプラグから逃げていたわけだが標準的な再生画像をビデオ・スコープで説明してわかるでもなし(ベクトルスコープで微妙な色を類推できたら神だ(笑))困ったものだと思う。

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